鳥取県、島根県を現地調査/仮設住宅の新たなトレンドを考察

度重なる自然災害が全国各地を襲うなかで、被災者の生活再建を支える仮設住宅のあり方がますます重要になっています。これまでの仮設住宅は「いかに早く建てるか」が優先されてきましたが、長期化する避難生活を経験する被災者の声を受けて、単なるスピードだけでなく「居住性」や「継続利用」を重視した新たな発想が求められる時代へと移り変わってきています。

そこで私たち一般社団法人地方創生戦略研究(地創研)が注目したのが、工場で高品質な住居ユニットを製造し、災害時に迅速に運搬・設置できる「ムービングハウス」と、熊本県の「くまもとモデル」に代表される木造仮設住宅の二つのアプローチです。ムービングハウスは“社会的備蓄”として居場所そのものを備える発想を持ち込み、避難期間終了後も公共住宅や福祉施設、空き家対策に再活用できる点が大きな魅力です。一方、木造仮設住宅は断熱性や遮音性に優れ、畳や県産木材を取り入れることで人々に温かさと安心感を提供し、仮設住宅としての役割が終わってからは市町村施設などに活かされるサステナブルな仕組みとして高く評価されています。

しかし現状では、いまだに仮設住宅の提供に半年以上かかる地域もあり、十分な備えとは言えません。どれだけ優れたモデルがあっても、時間と知恵を持って平時から制度を整備し、共有しておかなければ災害時に活かしきれないのです。私たちは今こそ「活かせる仮設住宅」を社会全体で共通認識とし、次なる災害に向けた住まいの備えを進めるべきだと考えています。

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そうした課題意識を胸に、4月9日には鳥取県北栄町と八頭町を訪問し、手嶋俊樹町長、吉田英人町長と懇談する機会をいただきました。北栄町では『名探偵コナン』の作者・青山剛昌先生ゆかりの地として、コンテンツを活かした観光振興を実践中です。モニュメントやふるさと館が来訪者を惹きつけ、商店街の活性化にもつながっている様子は、防災と観光振興が相互に補完し合える好例だと感じました。

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八頭町では、若桜鉄道を中心に木造駅舎や給水塔など昭和の風情を残す観光資源を守りながら、「隼駅まつり」のようなイベントで地域が一体となってにぎわいを生み出しています。地域の個性を尊重しながら、安全・安心を確保する防災体制を構築する――こうした両立の姿勢に深い感銘を受けました。

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今回の鳥取県訪問と仮設住宅の先進モデルへの学びを通じて、私たちは“備え”とは平時からの知恵と連携にほかならないと改めて実感しました。地創研は今後も、ムービングハウスの普及支援と、地域振興と防災を両立させる取り組みを全国へと発信してまいります。次なる災害への備えとして、皆さまとともに「活かせる仮設住宅」の地平を拓いていきたいと思います。