
7月5日、6日の両日、防災科学研究所の「防災支援人材育成プログラム研究開発」プロジェクトに参加しています。
国立研究開発法人防災科学技術研究所は、防災に関する知見を研究し、実際に地域の防災に活かす研究を行っています。なかでも、社会防災研究領域・災害過程研究部門は、災害発生によって社会にどのような被害が発生し、どのような回復過程をたどるかを、防災実務や災害現場との協働を通じ、科学的に明らかにします。そしてその理解に基づいた効果的な防災対策・防災教育・防災政策の提案を目指しています。
こうした専門領域の研究が、防災士などの地域の活動と連携が取れたら、日本の防災・減災に大きな貢献ができると考えます。
今回のプロジェクトは、李泰榮主任研究員が主宰しています。
大きなプロジェクトですが、しっかりとお手伝いしていきたいと思います。
地域防災の現状──形式化と人材不足のジレンマ
災害大国ともいわれる日本において、地域に根ざした防災活動の重要性はますます高まっています。近年の地震や台風、豪雨などを経験するたびに、地域の備えの在り方が問われ、見直されてきました。しかしその一方で、地域防災の現場では、いくつかの根本的な課題が浮き彫りになっているのが現実です。
現在、地域防災活動の中心を担っているのは、自治会や自主防災組織などです。これらの組織が実施する訓練は、長年の知識や経験に依存しており、消火訓練・安否確認・避難訓練といった「伝統的な訓練」が主流となっています。
しかし、こうした活動が画一的・全国一律に展開され、地域の実情に即していないことが多く見受けられます。さらに、防災活動自体が「マンネリ化」し、担い手の高齢化や参加率の低下などが深刻な課題となっています。この状況下で、「効果的な防災活動」を実践するには、地域防災の専門性を持った人材の育成と、持続的な支援体制が不可欠です。
防災士とは──地域防災を支える専門人材
防災士は、特定非営利活動法人日本防災士機構が設けた民間資格で、地域における防災活動や災害対応の知識を持つ人材の育成を目的として、2003年から制度がスタートしました。
防災士は、平時には防災啓発や訓練の企画・実施、災害時には地域住民への支援や情報伝達など、多面的な役割が期待されている「地域防災リーダー」です。
防災士制度にも課題があります。それは「防災士を地域防災の体系の中でどう位置づけるか」という点です。
現場では、防災士が資格を取得しても、地域の防災計画や自治体の体制の中に十分に組み込まれておらず、その役割が曖昧なままになっている例が少なくありません。防災士自身も、どのように地域と連携を図り、どこに属して活動すべきか悩んでいるという声が聞かれます。
自治体や防災関係機関、地域の自主防災組織などと有機的に結びつき、防災士が「地域の中で意味ある存在」として活躍できるような制度的枠組みや連携の仕組みづくりが、今まさに求められています。
防災士になるには──研修と試験を経て
防災士となるには、以下のプロセスを経る必要があります。
1. 自治体や大学など、日本防災士機構が認定した機関で「防災士養成研修講座」を受講し、「研修履修証明」を取得。
2. 日本防災士機構が実施する「防災士資格取得試験」を受験・合格(受験料:3,000円)。
3. 「救急救命講習」(心肺蘇生法やAEDを含む)を修了し、証明書を取得。
4. 以上をもとに「防災士認証登録申請」(申請料:5,000円)を行い、「防災士認証証」および「防災士証(カード)」を取得。
自治体によっては受講料や申請料への助成制度を設けており、地域での担い手育成を積極的に後押ししています。
これからの地域防災に向けて──「個人資格」を「地域の力」に
地域の防災力を高めるには、「知識のある個人」を「機能するネットワークの一員」として活かす視点が必要です。防災士が学び、得た知識や技能を、自治体・学校・企業・地域組織とつなげていくことで、災害に強いまちづくりの実現が近づきます。
単に「資格を持つ人」ではなく、「地域の防災を支える専門的存在」として防災士をどう活かしていくか。今後の課題であり、同時に私たち一人ひとりが考えるべきテーマです。
今こそ、「つながる防災」「実践する防災」が問われています。地域を守る力は、制度だけではなく、人と人のつながりの中にこそ生まれるのではないでしょうか。