近年、相次ぐ大地震や大雨災害などの発生に伴い、いつ、どこで起こるかわからない災害に備え、被災地の住宅を確保するということは国や自治体にとっての大きな課題となっています。
現在、主な応急仮設住宅として既存の民間賃貸住宅を借上げて提供する「賃貸型仮設住宅」、プレハブや木造など現地に施工する「建設型仮設住宅」が採用されています。
しかし「建設型」は発災後の建設候補地の決定、施工に時間を要し、「賃貸型」は被災地域、災害の態様によっては必要数を確保できない場合があるなど、課題点も少なくありません。
2016年に設立された一般社団法人日本ムービンハウス協会は、移動式木造住宅を利用し被災地に迅速に供給・設置できる応急仮設住宅「ムービングハウス」の普及促進と、災害時に被災地への大量供給に備えるべく[ムービンハウス]の社会的備蓄「防災・家バンク」をスタートさせるなど「ムービンハウス」の普及活動を行っています。
その活動は、平成30年(2018年)7月豪雨災害において岡山県倉敷市にて応急仮設住宅として「ムービングハウス」が初めて採用され、その後も北海道胆振東部地震、令和元年東日本台風(第19号)、令和2年7月豪雨など、様々な災害において「ムービングハウス」が応急仮設住宅の一形態として利用されるに至りました。
災害発生時に迅速に仮設住宅や仮設避難所を提供するためには、平時の準備が必要不可欠です。そのため、日本ムービングハウス協会は、仮設住宅の建設主体である都道府県や政令指定都市(救助実施市)と、事前に防災協定を締結し、住民の命を守る体制の整備を進めています。
2020年度までに、高知県、福井県、愛知県の3県と救助実施市の名古屋市と熊本市との間に「災害時の応急仮設住宅の建設に関わる協定書」を締結して、災害時の応急仮設住宅の迅速な提供体制を確立しました。
一方、最前線で住民と向き合う基礎自治体である市町村とも、積極的に防災協定の締結を進めています。
2019年12月に茨城県境町及び下妻市との協定締結を皮切りに、16市町協定を結びました。
茨城県においては、境町、下妻市、常陸大宮市、常総市、水戸市、取手市、小美玉市、那珂市、行方市、稲敷市、土浦市の11市町と協定が締結されました。
2021年度は、6月21日、22日、23日の3日間で、かすみがうら市、つくばみらい市、大洗町、守谷市、茨城町と協定を結び、あわせて締結市町村は16となりました。
6月22日、かすみがうら市(坪井透市長)との協定締結。坪井市長は「災害はいつ発生するるか分からない。そのために平時に出来ることはしっかりと準備しておきたい」と協定締結の意義を語りました。
6月22日、つくばみらい市(小田川浩市長)との協定締結。小田川市長は「新型コロナウィルスのまん延対策など、従来の発想では市民のいのちや財産は守れない。柔軟な考えで住民を守っていきたい」と語りました。
6月22日、大洗町(國井豊町長)との協定締結。國井町長からは、「単なる文言ではなく、非常時に実効性のある協定としていきたい」との言葉がありました。
6月23日、守谷市(松丸修久市長)との提携締結。松丸市長は、「守谷市は住みやすく、災害が少ないまちですが、万が一のことに備えて準備をする事は行政の責任」と強調。そして、変化の多い時代社会の中で、「地域の活性化にもムービングハウスの活用を、積極的に検討していきたい」と、語りました。
6月23日、茨城町(小林宣夫町長)との提携締結。小林町長は「10年前の東日本大震災の際は、茨城町も大きな被害を受けました。特に小学校での被害が大きく、子供たちの教育環境を守ることに大変苦労しました。いつ来るか分からない災害に備えるため、こうした民間事業者との協力は、茨城町にとっても大変ありがたい」と語りました。