茨城県災害ボランティア条例制定、令和3年度予算で基金造成

茨城県ボランティアセンター
 2020年12月15日、茨城県議会は、議員提案で提出していた茨城県災害ボランティア活動促進条例(災害ボランティア条例)を全会一致で成立させました。県ボランティア条例は、災害ボランティアの活動を促進して県民の安心・安全につなげることが目的です。
 2019年の台風19号による甚大な被害など、大規模な自然災害が頻発し、災害時はボランティア活動が緊急かつ重要性であることから、活動環境の整備や、県、市町村、社会福祉協議会などとの多様な連携体制の構築を目指すことが明文化されました。
 条例は、定義、基本理念、県の責務、県民・事業者の理解、連携強化、人材の育成・確保、推進体制の整備、財政上の措置など全15条で構成されています。県に対してはボランティア活動の体制整備と併せ、基金の設置を求めています。県独自の施策として、9本の柱を掲げられています。主な内容は
▶甚大な被害から災害ボランティアセンターの設置運営が困難な場合は、県が率先して必要な措置を講じる(第5条)
▶県・市町村・社会福祉協議会に対し、災害ボランティアセンターの円滑な設置運営のため、役割及び費用分担を明確にしておく(第8条)
▶児童生徒の防災意識の向上を図るため、学校で災害ボランティア活動に関する体験の機会を提供、自主防災組織等との交流に努めることを規定(第9条)
▶災害ボランティア活動に際し、個人情報の保護、被災者の権利利益の保護や、感染症の予防など安全の確保を県に求める(第10条)
▶ 条例の施策を総合的かつ計画的に推進するための体制の整備、基金の設置その他の必要な措置(第14条) —などです。

参考:茨城県災害ボランティア活動を支援し、促進するための条例(全文)(PDF:235KB)
https://www.pref.ibaraki.jp/hokenfukushi/fukushi/chiiki/20200817/documents/jorei.pdf


防災ボランティア支援

令和3年度新規事業に災害ボランティア基金を造成
 災害ボランティア条例の成立を受けて、令和3年度当初予算には、災害ボランティア基金を造成する予算1300万円が盛り込まれました。ボランティアの事前登録制度の充実や専用ホームページにおける情報発信など、災害時にボランティアが円滑に活動できるよう平時から準備を整えるとともに、新たに災害ボランティア支援への寄付金を積み立てる基金を設置し、災害時の資機材の確保など災害ボランティア活動への支援を行います。
 新規事業が認められたのは評価できますが、金額があまりに少額ですので、早期の数億円単位の基金造成を行うべきです。
 その使い道も、災害時の災害救助法の適用にならないボランティア活動等への支援に充てるべきです。
◯事業概要
災害ボランティアによる被災者支援活動の円滑化等に直結する事業に対して助成
◯助成対象団体
茨城県社会福祉協議会
◯助成対象項目
・災害ボランティアの現地作業に要する用具等の購入
(例)スコップなどの資機材購入経費
・災害ボランティアの輸送
(例)送迎用バスの借上経費
・災害ボランティアセンターの運営支援のためのシステム整備等
(例)災害ボランティアの事前受付システム、マッチングの円滑化に資するシステム等

災害ボランティア条例案に関するパブコメを提出
 災害ボランティア条例の制定にあたっては、提出者であるいばらき自民党が、条文案に関するパブリックコメントを募集しました。地方創生戦略研究所では、以下のようなパブコメを提出しました。
第1条関連:社会福祉協議会の位置づけが、県社協なのか、市町村社協なのか、その両者なのか不明瞭です。修正案:県、市町村、県社会福祉協議会および市町村社会福祉協議会(以下これらを「行政等」という。)
第8条関連:重大な災害では県外のボランティア団体が支援に入ります。その多くは、「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク」に属しています。こうした全国的なボランティア団体ネットワークとの連携も、視野に入れた連携強化が必要です。
また、重機ボランティアや家屋の応急処置のボランティアといった専門性の高い全国的な支援団体、いわゆるプロボノも災害復旧では欠かせなくなっています。内閣府防災担当もプロボノと様々な連携を持っています。ボランティアセンターのみならず、災害対策本部へのプロボノの参加も円滑な応急復旧に必要な時代です。多様なボランティアとの連携のあり方を模索するとともに,全国各地の災害を体験したボランティアの知を活かす取り組みを行うべきです。追加修正案(8条2項として追加):全国的に活動を行う災害ボランティア団体、専門的な知識や技術を有する災害ボランティア団体および個人、弁護士や行政書士、社会福祉士などの国家資格を有する災害ボランティア団体および個人などとの連携を強化すること。
第15条関連:災害ボランティア基金の造成は喫緊の課題です。市町村、市町村社協が迅速にボランティ活動を立ち上げられるために、10億円単位での基金造成を強く要望します。県外からの専門性の高いボランティア受け入れに関しては、宿泊に伴う費用、移動や重機の搬入に係わる費用などを支援することが必要です。県内に県外とのボランティア、プロボノ、士業ボランティアなどとの連携の中核となる組織(県社協または中間支援団体)を通じて、そうした団体との連携、支援を充実させるべきです。