能登半島地震から2年が経ち、被災地の「住まい」の状況はいまだに多くの課題を抱えています。住宅が大きな被害を受けた能登地方では、応急的な復旧や仮設住宅の提供が進んだものの、本格的な住まいの再建には時間がかかっている現実があります。
まず暮らしの基盤として欠かせない仮設住宅についてです。震災から2年を経過した今も、石川県内で建設型仮設住宅や民間賃貸を借り上げた「みなし仮設」を含め、約1万8000人が仮設住宅で生活を続けています。狭い間取りでの暮らしにストレスを抱える方や、生活基盤や地域コミュニティの再構築が十分に進んでいないとの声も多く、被災者の生活にはまだ我慢や不安がつきまとっています。長く続く仮設暮らしは、心の疲れや日常生活の制約につながっており、ゆとりある住まいの早期実現が望まれています。
復興公営住宅は、自力での住宅再建が難しい被災者にとっての重要な選択肢という役割を担っています。石川県では震災で住まいを失った人々のために輪島市や珠洲市、能登町、穴水町など9市町で復興公営住宅の整備が進められており、将来的な住まいの受け皿づくりが進んでいます。ただ、整備の進捗は地域によってばらつきがあり、住宅建設そのものが数年先になる見通しの地域もあります。「どこにいつ入れるのか分からない」といった不安が聞かれる中、自治体や県が進捗や計画を丁寧に発信していくことが住民の安心につながるといわれています。
住宅再建が遅れる背景には、建設費の高騰や人手不足といった構造的な課題も影響しています。仮設住宅から退去した後の住まい整備が難航し、退去の目途が立たない世帯も少なくありません。
暮らしの再建は住宅だけではありません。高齢化や人口流出、地域産業の再生といった地域全体の課題と密接に結びついています。仮設住宅での暮らしが長引く中で、「地域に根を張って暮らし続けたい」という思いを抱く人もいれば、別の地域への移転を考える人もいます。この分岐点に立つ被災者が、住まいの安心を確保し、地域コミュニティの中で生き生きと暮らせるよう、住宅整備と並行して地域全体の活力を取り戻す取り組みが求められています。
能登半島地震から2年という節目に、住宅や暮らしの現状を改めて見つめ直し、被災者の声に寄り添いながら、希望のある未来へ一歩ずつ前進していくことが大切だと感じています。この地域の復興が、「住まい」からしっかりと根づいていくよう、支援と連携のさらなる充実が期待されます。
奥能登地域では人口が1割減

能登半島地震後、奥能登地域の人口減少は、これまでの緩やかな減少局面を明らかに超えるスピードで進んでいます。
石川県の資料によると、対象となる6市町(輪島市、珠洲市、志賀町、中能登町、穴水町、能登町)の総人口は、93,304人(平成5年12月)から84,103人(平成7年11月)へと9,201人減少しました。これは約9.9%の人口減にあたり、わずか2年足らずで1割近い人口が失われたことになります。
市町別に見ると、最も人口減少が大きいのは輪島市で、23,118人から19,734人へと3,384人減少(▲14.6%)しています。次いで珠洲市が12,573人から10,469人へ2,104人減(▲16.7%)と、率では最も深刻な減少となっています。震源地に近く、住宅被害や生活基盤への打撃が特に大きかった地域ほど、人口流出が加速している実態が数字からも読み取れます。
一方、志賀町(▲6.0%)、穴水町(▲9.3%)、能登町(▲9.1%)も決して小さくない減少幅です。比較的被害が限定的とみられた中能登町でも▲3.3%の人口減が起きており、震災の影響が奥能登全域に及んでいることが分かります。
男女別に見ると、男性▲3,989人、女性▲5,212人と、女性の減少数が大きい点も特徴です。これは高齢女性の転居や、若年・子育て世代の地域外転出が複合的に影響している可能性を示しています。世帯数も全体で42,482世帯から39,675世帯へと2,807世帯減少しており、人口減少がそのまま地域の生活単位の縮小につながっています。
このデータから見えてくるのは、能登半島地震が単なる「一時的な人口流出」ではなく、定住構造そのものを揺るがす転換点になっているという現実です。住宅再建の遅れ、仮設住宅での長期生活、医療・買い物・交通といった生活機能への不安が重なり、「戻る」「住み続ける」という選択が難しくなっている状況が、人口減少として表面化しています。
今後、復興公営住宅の整備や住宅再建支援が進んだとしても、人口が自然に元に戻るとは限りません。住まいの確保と同時に、働く場、医療、地域コミュニティをどう再構築するかが問われています。今回の人口データは、復興政策を「元に戻す」発想だけで進めることの限界を、静かに、しかしはっきりと示していると言えるでしょう。
能登の復興は、インフラの復旧だけでなく、人が住み続けられる条件をどうつくるかという長期的な視点が不可欠です。人口増減の数字は、その成否を映す重要な指標として、今後も丁寧に見つめ続ける必要があります。
